世界が傾いている




世界が傾いている



 不思議に思ったことがある。その疑問を口にすると「頭、おかしいんじゃない?」と言われるのがおちなので、今までは黙っていた。誰に訊ねるわけにもいかない。疑問を自ら解明していくしかない。


 夏、バイト先へ向かうとき、太陽が正面から昇ってくる。

 朝日は東から昇る。それは当然だが、角度が少しおかしいのではないかと気がついた。太陽が真東より左側に出てるのだ。太陽はいちばん北寄りになったときでも北回帰線上だ。北回帰線は日本よりはずっと南にある。太陽が日本より北側を通るということはない。

 疑問に感じ、調べてみることにした。何か誤解があるはずなのだ。針磁石と地図を持って早朝に出かけた。

 地図と実地の方角を合わせやすいところをいろいろ選び、方位を計測してみた。地図と実地で方位がずれてる気がする。どこからどうずれてるのか、わからなくなった。

 長岡京市を出て、大山崎町の名神高速の前に立った。地図と実地がピタリ合った。市外に出ると合うのか。また市内に引き返し、計測を続けた。やはりほとんどの地点で狂ってる。思わず叫んでしまった。「地球は回っている!」・・・もとい、長岡京市は傾いている。


 中心市街地はどうなんだろうと、イズミヤ近辺の道路で調べた。この道は東西方向に平行に走っているはずだが、道の北側の立ち木や電柱の影が道路に向かって伸びている。道と影との角度は10度ほどだが、太陽を背にして道路を見ると、長い影が南に向かって何本も伸びているのが見える。今まで、これを見て奇異に感じた人はいなかったんだろうか。

 太陽の方角も調べた。微妙に北寄りになってしまう。太陽が真東より北へ行くわけがない。

 ネットから長岡京市の航空写真をダウンロードした。地図のミスがあるのではないかと調べた。部分的に道の角度が狂ってるところはあるが、おおむね合っている。東西に水平な道はやはり水平だ。しかしこの航空写真は、正確に真上が真北だと保証されたものではない。写真の向きを地図の方角に合わせただけかもしれない。


 再度、地図と実地の誤差を綿密に調べ直すことにした。

 針磁石を地図面に置き、地図の北と磁石の北を正確に合わせた。そして向きを変えないようにして、そっと目の位置まで持ち上げた。実地の道と地図の道がぶれてないか見た。この方法で測定すると、ほとんどのポイントで誤差は2〜3度以内におさまった。前回調査ので狂いは方位合わせが正確じゃなかったことによるらしい。その上、地図じたいも細かい部分では向きが微妙に狂っている。


 地図は合ってるようだけど、日の出の太陽が北に出てたことはまだ解決してない。天体モデルを用意して検証することにした。ソフトボールを太陽に、軟球を地球に見立てて並べてみた。軟球の接合部分が赤道だ。

 太陽が右、地球が左。日本が手前側。夏至の位置関係になるよう、赤道の太陽側を下げた。これで日本の日の出の時刻。そうなると、太陽は真東よりやや北になる。

 驚いたが、日の出の時刻には太陽は北寄りになってしまう。真東が下へ傾いてるから、太陽のある左はやや北寄りになる。これは世界のどの地域でも同じだ。正午に南へ移動し、夕暮れにはまた北に戻って沈む。

 なんだか手品にだまされたみたいな気分だが、太陽が北に出るという不可解な問題は解決した。こんなことは天文をやってる人にとって常識なんだろう。訊ねて、哀れみのこもった目で見られなくて、ほんとによかった。

ひょっこり通信 2008.3.9

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