「アルテミス・ファウル」のシリーズ

オーエン・コルファーEoin Colfer著




アルテミス・ファウルのシリーズ



 ファンタジー&SF系の連作です。シリーズものの傑作に当たって興奮しています。ローズマリー・サトクリフのローマン・ブリテン歴史小説のシリーズを読んで以来で、5年ぶりの新鉱脈発見です。

 図書館で同じ著者の『ウィッシュ・リスト 願い、かなえます』がアンテナにひっかかりました。手に取るまでこの作家の名前は知りませんでした。  この本は純然たるファンタジーですが、今までにないテイストとユニークな世界観がありました。あとがきに「アルテミス・ファウル」シリーズが代表作とあるので、さっそく読んでみました。即、やみつきです。


 オーエン・コルファーはアイルランドの作家。このシリーズはアイルランドの妖精たちの物語ですが、これまでの妖精譚とはまったく異質なのです。妖精が人間の上をゆくハイテクノロジーを完成させている。ハイテク+魔法の物語です。

 この設定は本来ありえない。魔法など、人類より優位に立つツールを持つ妖精が高度なテクノロジーを発展させることはありえない。人間が知的世界を発達させたのは、他の能力の点で劣位にあったからです。

 そうした基本的な設定に疑問があるのですが、気にしないことにしました。気にしてるまもないほど高密度に面白いストーリーが詰まっているのです。細かなディテールや会話に、よくこれだけ読者をゆさぶる要素を敷き詰めたものだなと感心した。


 ジャンルはファンタジー&SFですが、ミステリーでもあり、サスペンスタッチが濃厚で、冒険と激しいアクションは当然あります。物語のメインは凶悪な悪党と戦う妖精警察偵察隊の活躍です。

 テイストはかなりビター。容赦ないくらいに。いちおうこれでも児童書として書かれてるんですけど、子供にはきつい部分があるかもしれない。といっても、犠牲者バタバタというやつではなく、ほとんど死者は出ないんですけど。


 物語の中心になるのは女性警官であるエルフのホリー・ショート。実質的な主人公です。もう一人の中心人物は、人間の少年のアルテミス・ファウル・ジュニア。子供でありながら、天才的な泥棒です。

 第1巻ではこの二人が対決しますが、以降は相手の能力を見込んで手を結び、冷酷な巨悪に立ち向かうというストーリーになっていきます。

 アルテミスは人間的な感情の乏しいいびつな人間で、感情移入できません。それでもエルフのホリーや他の仲間とのかかわりを通して少しずつ変化していきます。

 二人をフォローする仲間たちがそれぞれに魅力的で、人物描写に長けたコルファーの腕のよさを感じさせる。エルフの偵察隊長、ファウルのボディガードの巨漢、ハイテクおたくでうぬぼれ屋のケンタウロスなど。その中で個人的にお気に入りなのが、潜入プロの泥棒ドワーフ、マルチ・ディガムズです。臭くて汚くて貪欲で大食らいで、いちばんの趣味がひとの神経を苛立たせることという、ネガティヴだらけのやつですが、大好きになりました。

 感情移入できるのはエルフのホリーです。女性っぽいシーンはなんにもないんですけど、キャラクターに魅かれます。


 妖精というのは日本風に言うと妖怪です。妖怪ほどではないでしょうが、たくさんの種類があります。シリーズに登場するのは、エルフ、ドワーフ、ケンタウロス、ゴブリン、トロール、ピクシー、スプライト。区別つきます? ドワーフといっても七人の小人のような温厚なのじゃないですよ。

 妖精の種類を知らなくても読むのに差し支えありませんが、僕は映像を想像しながら読むクセがあるので、けっこう大変でした。

 去年読んだ「ライラの冒険」シリーズ(フィリップ・プルマン著)とつい引き比べてしまいます。あれも面白かったんですが、ストーリー展開やキャラクター造型において能力不足が明白でした。異次元世界の創造においてはコルファーを超えるものがありました。

 考えてみれば、色恋を描かない、死者がほとんど出ないという展開で、ぐいぐい読者を引っぱっている。コルファーの力量の大きさがうかがえます。


 映画化の話はありました。ジム・シェリダン監督で2007年に撮影開始予定というところまでこぎつけたようですが、残念ながら制作されていません。ファンタジー映画の人気が急落してしまったので、難しいと思います。

 シリーズは6作発表されていますが、日本で翻訳出版されてるのは4作目まで。5作目の発表が2006年なので、まだ可能性はありますが、どうにも日本では人気が薄い。途切れてしまうんじゃないかという焦燥感があります。



 第一巻『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』
 第二巻『アルテミス・ファウル 北極の事件簿』
 第三巻『アルテミス・ファウル 永遠の暗号』
 第四巻『アルテミス・ファウル オパールの策略』
  発行:角川書店

ひょっこり通信 2009.9.20




オーエン・コルファー - Wikipedia

オーエン・コルファーの児童書ファンタジー「アルテミス・ファウル」ディズニーにより映画化始動?|Librarian Nightbird

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